バウンス・ベイビー!


 大人になって忘れたはずの人だった。

 これからも会いたくない人だった。

 会わずに済むはずの人だった。

 その為に今まで二回ほどあった高校の同窓会だって欠席してきたのだ。
 
 なのになのになのにどうして、どーうして、私が働く作業場にきたのだろうか。

 どうしてなの神様!?ちょっと酷いんじゃあないの!?

 涙まで浮かんできてしまってビックリする。泣いてる場合じゃない。そろそろあの二人が白い作業着にエプロンに白い帽子という笑える姿になってここへやってくるはずだ。そして私は仕事として、彼に串のやり方を教えなければならないのだから。

 視界の端に、竹かごに入った数百本の竹串がうつった。

 ・・・これを頭に突き刺したら、ちょっとはハッキリするかしら。



 他の人が自分の作業に没頭する中(羨ましい)、私は新人で入ってきた元同級生に、焼き鳥の肉を串にさす作業を教えなければならなくなってしまった。

 パートのおばさん達は今日も元気よくそして機嫌よくお喋りをしながら作業している。会話はしていても彼女達の視線は手許に集中し、私などでは到底太刀打ち出来ないスピードで、せせりを美しく串刺しにしていっている。ううう、羨ましい。私はまだあのレベルには到達できていないのに、一体どうしてこんなことに。

「じゃあとりあえず、まずは手を洗って消毒から」

 私は暗い声でそう言って、平野をつれて洗い場へいく。


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