バウンス・ベイビー!
パートさん達にもリーダーにも挨拶。今日は前園さん以外は出勤だし、1店舗臨時休業しているらしいから仕込みも少なめなはず。
私は平野に対しての態度をあれこれ頭の中で描きながら、作業にと入る。
包丁を研いでいると手を洗いに平野が来た。
「・・・何か機嫌いいのか、今日?」
ぼそっとヤツがそういうのに、私は研ぎ石の上に包丁の刃を慎重に当てながら別に、と返す。
「今まで避けまくってたのに、どうして返事することにしたんだ?」
「いや、同僚だし無視して雰囲気悪くするのはダメよね、って気がついたから」
うるさいな。私はちょっとむすっとしながらゆっくりと刃を研ぐ。一度止めて水で洗い、親指の爪に刃をあてて切れ味を確かめた。
ふうん、と平野は手首まで泡だらけにしながら呟く。
「・・・昨日、何かあったんだな。急に態度が変わるのは」
カチンときた。ついやかましい!って叫びそうになったけれど、普通の態度、という相沢さんの言葉が浮かび上がってきてぐっと我慢する。この人はただの同僚よ、ただの同僚。答えてあげたって問題ないでしょ。だから、ツンと済まして言った。
「昨日久々で遊園地に行って遊んだから、ストレスも発散できたしねー」
多少棒読みであったかもしれないが、そういってのけた。よくやったぞ私。
「遊園地?」
平野がそう聞き返す。水道を止めて専用のタオルで拭き、アルコール消毒液を手に取りながら、低めた声で。