バウンス・ベイビー!


 休みが頂けるのは有難い。

 そういうわけで「良いお年を」だけを酷い声で言うだけ言って帰宅し、そのままベッドにバタンキューだったのだけれど、体を壊している時ってどうしてこんなに心細いのだろうか。

 一人で毛布にくるまりながら、私はポロポロと寂しくて泣く。

 実家はさほど遠くはないけれど、電話するなら昼間にすればよかったのに、私はしなかった。だから両親も兄弟も、私が一人で熱にうなされていることは知らないのだ。言えばよかったな・・・そしたら母さんが来てくれたかもしれないのに。

 この会社に就職してから、私には正月はなくなった。去年は1月1日は実家に顔をだし、豪勢な料理だけを食べて帰ったけれど、今年はどうしようか悩んだ結果、自分の部屋でゴロゴロすることを選んだのだった。だから私から連絡がないことにも、親は変に思わない。

 ・・・うわーん・・・今晩私がここで死んでも、誰かに発見されるのは2日の午後が最速ってことよねえ~・・・。それって悲しい。

 うつらうつらと熱が揺れている。目を開けていたら天井が回るようなので、目を閉じたままで隣の部屋の物音なんかを聞いていた。

 咳をしても一人の真っ暗な狭い部屋の中、私はベッドの上で体を丸めている。

 熱が高くて食欲もないから、帰りに自動販売機で買ってきたビタミンウォーターで薬だけを飲んで、そのまま寝落ちしてしまった。


 浅い夢の中、私は一人ぼっちで駅のホームのベンチに座っている。

 目にうつる何もかもが白く、広い風景で、雪も降っているようだった。私も真っ白な服を着て、やたらと姿勢よくベンチに座っていた。

 ・・・ここは、どこだろう。

 どうして誰もいないのだろう。

 私は周囲を見回して、白い雪がしんしんと、白いホームに降り続くのを眺めていた。


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