バウンス・ベイビー!
嫌だけど、仕方ないのだ。だって私はここの正社員なのだもの!それによく考えたら、教えることさえ完了して彼が一人で出来るようになれば相手をしなくてもいいってわけで・・・と、いうことはアウトオブ眼中が実行できるってことで・・・・。
よし。
私は覚悟を決めたのだ。早く早く、一日も早くこの人に作業を覚えて貰って、彼から解放されようって。
「手首の上までちゃんと泡で洗ってね。それからアルコール消毒液がここにあるから―――――――」
いいながらやってみせるのに、平野は黙々と従った。はい、とか何とか言えよコラ。まだ動揺した心の中で私はそう突っ込む。こっちが立場は上なんだから、注意するところは注意しなきゃ―――――――・・・
「包丁やまな板も使うたびに洗って消毒もしてください。いいですか?」
また無言。
くそ、何とか言えよ!苦情を言おうときっと彼に向き直ると、平野は真正面から私を見た。
ぐっと詰まる。・・・だ、ダメだ、こんな見られ方は緊張する・・・。
あっけなく私は身を翻し、早足で作業場に戻った。
「え、えーと、じゃあ始めます。これはせせり。鳥の首のところにある肉で、うちの会社ではここを一般的に焼き鳥と言われるものに使ってる。柔らかくて美味しいの。これを串に刺していくんだけど、やり方を見ててね」
また無言。すっごいイライラする~。
だけどもしかしたら、ヤツも緊張しているのかもしれない。仕事を教わるのが私だなんて、よく考えたら平野の方が居たたまれないのかも。そう考えることで、私は少しだけ肩の力を抜いた。