バウンス・ベイビー!


 深くため息をついて、私は頷いた。

「当たり前でしょ、私は一人暮らしなんだから」

 とりあえず寒いからドアをしめる。それから平野を追い立てて部屋の中へと入った。そういえばまだ暖房もつけていない。ドアを開けっぱなしだった間に冷気が部屋にはいってしまって冷えていた。

 私は部屋の隅のストーブをつけて、それから慌ててパーカーを羽織る。私ったらパジャマじゃないのー!と気がついたからだ。

 ちょっとキョロキョロしたあとで、平野は袋をどさっと置く。

「何も食べてないんじゃないかと思って、適当に買ってきたけど」

 袋の中からはレトルト食品や果物、それにスポーツドリンクが入っていた。私は恥などすっとばして、両手をあわせて感謝する。

「うわ~・・・ほんと有難い!助かったよー、昨日買い込むつもりで出来てなくて、食べるものがないってさっき思ったところで・・・」

 食べてないのか?と平野が座りながら聞くから頷いて、私はいそいそとお湯を沸かす用意をする。寒い中持ってきてくれたんだよな、と思い当たって、平野にお茶を淹れようと思ったのだ。自分の分は平野が買ってきてくれたお惣菜のグラタンをレンジに放り込んだ。

「だって藤、彼氏は?連絡したのか?何か持ってきてもらえばよかったのに」

 ぴたっと動きを止めてしまった。その急な攻撃は、紛れもなく、私の心臓を一気に打ちぬいたのだ。また、冷や汗が出るのを感じる。え~っとね・・・としどろもどろになりながら、何とか手を動かす。


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