バウンス・ベイビー!


 お湯を沸かして、ここに注いで、それからそれから・・・。

 レンジが鳴ってグラタンが出来上がる。私はそれを取り出して、一つしかない小さなテーブルへと置いた。平野は私がやることを見ながら無言で待っているようだ。

 ・・・仕方ない。

 お茶を淹れて平野の前におき、フォークを握り締めたままで、私も座る。

 それから、言った。

「彼氏はいないの。あれは・・・嘘」

 平野は眉を上げた。

「嘘?」

「そう、嘘。平野に聞かれたから・・・つい、肯定しちゃっただけ」

 ヤツの顔が見れなくて、私は頂きます、と小さく口の中で呟く。

 平野は呆れたようだった。何も言わなかったけれど、多分呆れているはずだ。顔をみたら、そんな表情をしているはず―――――――――

 しばらく無言でご飯を食べた。一日ぶりに食べるご飯は温かくて美味しくて、味覚も戻って来ていると私を嬉しくさせる。

 外は雪がふっている。ほとんど音が聞こえなくて、私の部屋も静かだった。目の前に平野がいるのに、私は緊張してなかった。多分それだけ食事に夢中だったからだろうと思うけれど、無言のこの空気は重いものではなかったし、平野が上着をぬいであぐらをかいたことで、何となしにリラックスした雰囲気が広がったのだ。

「ああ、美味しかった。ご馳走さま」

 私は両手をあわせて御辞儀をする。急に食べたらお腹がいたくなるかもだけど、とにかく口が止まらなくて食べるのはかなり早かったと思う。ようやく顔を上げると、そこには穏やかな顔をした平野がいた。


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