バウンス・ベイビー!
「袋から肉を取り出して、包丁でまずは半分に切ります。手は十分に注意して。それから肉の細い方を串にさして、回転させながら―――――――」
話しながらやってみせる。これはちょっとコツのいる作業で、見た目ほど簡単ではないのだ。最初は、へえ~出来そう、と思っていた私も、まず串すらうまく扱えなくて大変な思いをしたものだった。教えてくれた高峰リーダーは苦笑していたのを覚えている。
「判る?やってみて」
体をずらして場所をあけると、平野は無言で包丁を持った。そしてまずは肉を手にとってまな板にのせ、言われた通りに半分に切る。それから串をとって刺し始めた。
私は隣でそれを見ながら、うくくくく、と思っていた。予想通りに苦労している。肉を回転させて串にさしていくのは、実際のところ難しいのだ。想像通りになってくれると、ささくれだった心もちょっとは丸く戻るってものだ。
「一本30グラムが目安で。秤にのせて確かめてください」
慣れるまではやり続けてもらうしかない。それに私の今日の仕込み量だって決まっていて、それは目の前に山積みになっているのだ。だから隣に立ったままで、私は自分の分をやり始めた。
途中で、あ、これは言わなきゃ、と思い出したことを逐一口にする。平野は無言だったけれど、こっちを見て頷いているから聞いてはいるらしい。
まだドキドキとうるさい心臓は串刺しに集中することで忘れることにした。
集中よ集中!今日はまだ、これから300本仕込まないといけないんだから――――――――
しばらく没頭していたら、隣から、あ、と声が聞こえた。