バウンス・ベイビー!


 私は藤千明という。今年で25歳になる、うちの会社での新人だ。何せ今年は新入社員の採用はなかったので3年目になったけれどもやっぱり私が一番の新人って立場は変わらない。

 この不況の世の中に店舗の装飾をしないことによって格安を実現し、業績を伸ばしてきた焼き鳥居酒屋。その会社に雇ってもらえて、ようやく3年目に入って数ヶ月なのだ。

 私の担当は仕込み。本社が管理している10店舗の内5店舗分の焼き鳥各種を仕込んでいるのだ。冷凍した串は使わないというのがモットーであるうちの会社は、毎日仕込んで毎日焼いて売る。肉は保管しても二日だけで破棄する決まりなので、基本的には毎日仕込みをしなければならない。

 昼間働いているのは仕込み場の工場(というにはおこがましいが)で、その10畳ほどの台所で6人の従業員と仕込みをするのだ。

 責任者でリーダーの高峰さん。詳しくは知らないけれど30代半ばの男性で、メガネをかけたちょっとぶっきらぼうな話し方をする人。最初は何言われても怒っているのだと思って、ビビりまくっていた私だ。それから社員は私と1年先輩の田内さんという男性。ぽっちゃりしていて穏やかな男の人。食べることが好きでここに入社したのに、作ってばかりでちっとも食べられないと2ヶ月に1度は不満を漏らしている。その下にやたらと明るいパート勤務のおばさん達が3人。浜口さん前園さん北浦さん。ここでは5店舗分の仕込みと肉の仕入れを担当していて、全6人でその全てをやっている。

 本日休みの田内さんとパートの浜口さん1人を抜いたメンバーで、朝の10時からひたすら仕込をみやっているのだ。

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