バウンス・ベイビー!


「ああ~、目の前でご馳走を下げられた気分だぜ。今まであんな~に時間があったのにな~。何してたんだ俺は」

 リーダーはブツブツと文句を言いながらイライラを発散するかのように事務所を歩き回っていたけれど、やがて私にこう言った。

「・・・藤、朝からビビらせて悪かったな。もう他もくるだろうから、準備してくれ。俺も普通に戻るように努力する」

「あの・・・はい!」

 指示が有難かった。私はコートを手早く脱ぐと、棚に私物を置いてエプロンをひっつかむ。そこで後ろからリーダーの声が追いかけてきた。

「藤、もしも、な」

 え?まだ何か?そう思って恐々振り返った私に、眉間に皺を寄せたままの高峰リーダーが言った。

「もし、平野に泣かされたら・・・言えよ。俺が天罰を与えてやる。うちの社員に何すんだって」

 私はリーダーをじっと見た。不機嫌な顔で今にも唸りそうだけど、その一瞬で優しさが伝わって来たのだ。上司としての線引きを、今、したのだろう。この人は今、自分の立場を明確にしたのだ。それが判って、ぐっと胸にくるものがあった。

「・・・はい。有難うございます」

 私はそう言って頭を下げると、倉庫へとダッシュした。電気をつけて倉庫の鏡でリーダーに指さされたところを確かめる。確かに、たしか~にそこにはアザのようなものがあった。そこだけでなく、よく見ればデコルテラインにもぽつぽつと!

「・・・マージで!?」

 自宅のシャワールームでは小さな鏡しかないし、洗面所なんてものはない。化粧はほとんどしてないしで、私はそんなことには全然気がついていなかったのだ。


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