バウンス・ベイビー!


「ちょっとちょっと~!これは・・・これはヤバイでしょ~!!」

 泣き言だ。恥かしいし、他の皆にもそれがわかってしまうなんてご免だった。あ、この子もしかして、って!手でごしごしとこすってみるけれど痕は消えず、私はその場で地団駄を踏む。平野~!!何してくれるんだああああ~!!

 あれか!?あの餅を焼いている時に吸い付かれたあれなのか!?うおおおお~っ!

「もう!全く~!」

 今日着ている服はいつも冬に着ているタートルネックではない。エプロンでも隠せないし、これは本気でやばいかもしれない。そう思って、私は奥の手を使うことにした。

 もう涙目だったけど、泣いてる暇などない。

 去年事務所に置きっぱなしだった化粧道具が入っているポーチを取ってきて、エプロンで隠れない場所のキスマークにファンデを塗りたくった。完全には消えないのもあったけれど、ちょっとはマシになる。これで今日はどうにかするしかない。だけど首筋にファンデがついているのに顔がスッピンではやっぱりおかしい。ということで、化粧までするはめになる。

 何で朝からこんなに疲れてるのよ、私・・・。

 何とか形にして、はあ、と息をはいたところで、他のメンバーが出勤してきたのが声で判った。

 おめでとうございます~!と高い声が聞こえるのは、パートさん達がリーダーに挨拶をしているからだろう。私も行かなくちゃ。


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