バウンス・ベイビー!
自分の作品をもう一度最初から読み直してみたその夜、私は一つの決定をした。
もう一つ、二人の絆を強める何かが必要だ、と思ったのだ。今のままでは、何と言うか――――――――
「・・・軽い。うん、軽いわよね」
何度もそう言いながら、私は部屋の中をうろうろと歩き回る。あと一つ、何かの出来事を挟みたい。そうすればきっと主人公の美春の気持ちだってかたまるはずだ。今は俺様系のヒーロー隼人に頼りきっている状態だけど、やっぱり現代日本の成人女性がそれではいけないし・・・。
久しぶりの休日だった。
年があけてからも、松の内までは飲食業界は忙しい。担当するすべての店舗が休み返上で頑張っていたせいで、その串の仕込みをしている私達もフル回転だった。毎日毎日銀色のバットと半氷の生肉と切れない包丁に囲まれて、いい加減にうんざりしていた。
10日間の連続出勤。パートさん達はそれでも3日に1日の休みが義務付けられていたけれど、リーダーと田内さん、それに私の社員の3人は有無をいわさず、それに暇で稼ぎたい大学生である平野は自主的に、休みナシの連続勤務だったのだ。
途中、弱音もしくは苦情を吐いた回数は、私が10回、田内さんは3回、高峰リーダーなど20回は言っていた。責任者が一番文句たらたらだったわけで、それは職場の士気を下げまくっていた。だけどその原因の中に私が平野と付き合いだしたこと、も、あると知っている私は(何せリーダー本人にそういわれましたから)、諌めることも出来なかった。