バウンス・ベイビー!

 その日の夜は、珍しく平野が来なかった。

 メールで『ちょっと用事が出来たから、今日は行くのやめとく』ときていて、私ははーい、と返事をする。そりゃあ平野だってプライベートな用事もあるだろう。新年に結ばれてから、ヤツは何かと私を優先していたようだったし、それがいつまでも続くわけがない。

 私は気楽に銭湯でゆっくりと体をほぐし、それから晩ご飯を食べて、ふ、と思いついた。

 仁美に電話しようかな、って。

 去年、紹介した相沢さんとどうなってるの?とメールが来て以来、そういえばこっちから返信してなかった、と思い出したのだった。

 よく考えたら明けましておめでとうすら言ってないわ!そりゃダメでしょ、折角の友達に!そう思ってちょっと慌て、時計が9時過ぎるのを待ってから電話をかける。

 コール5回数えたところで、仁美の明るい声がした。

『はいはーい!千明~?あけおめ~!』

 私はホッとして返事をする。

「仁美、おめでとう。ごめんね、年末からずっと忙しかったから放置しちゃってて」

 電話の向こう側からテレビの音が聞こえる。ちょっと待って、と仁美がいい、場所を移動したようだった。

『ごめんごめん、タカシがやたらと大きな音量でテレビ見るのよ!年末年始忙しいことは知ってるから、大丈夫よ~。ちょっとは落ち着いたの?』

「うん、今日ようやく休みで」

 壁に背中を預けてもたれかかる。耳にひびく仁美の声はやっぱり明るくて、こちらも自然に楽しい気分になってくるのだ。


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