バウンス・ベイビー!
「お兄は彼女いないもんねえ?寂しい一人身だもんねえ~?」
って。俺は今いないだけだよ!前はいたっつーの!ってむきになってつっかかる兄を抑えて、従姉妹が顔を突き出してくる。
「そうなんだ!?それでそこはかとない色気が!?」
「い、色気?」
私が驚いてそう聞くと、従姉妹はにやりと笑う。
「うん。綺麗になってるし、目を伏せたときなんか、触れなば落ちんの風情だよ。で、で、どんな人なの?どこで出会った?」
そういえば従姉妹も今はフリーだとおばさんが台所で言っていたな。私は思い出して苦笑する。世間の人の恋話に食いつくスピードったら!
「職場だよ」
「へえ~!年上?」
自分と同じ年だったら嫌だと思ったのか、兄もこっちへと顔をむけている。私は簡単に首を振った。
「同じ年。元同級生なのよ。高校で一緒だったけど、大学は別で、職場で会ったからびっくりした」
ふうん、従姉妹はすっかり体を真横にむけて真剣な顔だ。
「だったら人柄も知ってるし、恋に落ちるのはあるかもねえ~」
・・・いや、そこには省きたい経緯がたくさんあるのよ。私は心の中でそういうだけにして、表面ではへらっと笑っておいた。
「そういえば千明の高校、この先だったよな。店に行く前に通るぞ」
兄がそういって、私は改めてタクシーの窓から外を見る。・・・ああ、本当だ。この道は見覚えがある!私の家は大学時代に引越しをしていたので、ここら辺は久しぶりだった。