バウンス・ベイビー!
記憶を頼りに歩いていくと、思っていた通りの風景が広がった。懐かしいお店も変わっていない。よくここで平野が登校してくるのを待ってたっけ、そんなことも思い出す。
声をかける勇気はなかったけど、たまたま電車が君のバスと同じ時間になったんだよ、そんな風を装って待ち伏せしていたものだった。後ろ姿を見ながら学校までいくのが好きで。勝手に歩調を同じにして歩いたりもしたんだった。
休日でもクラブ活動はある。校庭で活動する野球部やサッカー部の声が聞こえる中、私は校門前に立っていた。
「・・・変わってないなー」
何も、変わってなかった。学校の中では細かい配置変えや先生方は新しい人がきているのだろうけれど、校門から見た学校は私の記憶と完全に一致した。
冷たい風が吹いて、一瞬過去へと記憶が遡る。合格発表報告の日、ここから見える、あの校舎の影で平野を待っていた。一人で来てるかな、友達と一緒だったらどうしよう、そう思いながら、告白しようと身構えて。
散々な結果だっかけど、それが今ではどうよ。一緒にいるじゃあないの。
私はつい口元が綻ぶのがわかった。
あの日は無駄じゃなかった、って思いたい。あれがあったから私は臆病にもなったけれど、そのお陰で他の世界へと目をむけて、大学生活を楽しんだのだって。
「・・・ううー、しかし寒いな~・・・」
吐く息がそのままで凍っていきそうだった。