バウンス・ベイビー!


 ここで風邪を引いてしまうと、高峰リーダーは頭を抱えて唸るに違いない。また風邪か!?って耳元で怒鳴られる気がするし、それは何とか回避したい。そろそろ帰ろうか、そう思って、最後にもう一度と校舎や校庭、体育館の影なんかを見回していると、あのー、と声が聞こえた。

「え?」

 私は振り返る。

 すぐ近くにジャージにベンチコートを着た男性が立っていて、私の顔を見るとパッと笑顔になった。

「あ、やっぱり!藤さんだろ?俺、吉田健介。覚えてるかなー、高3で同じクラスだったんだけど」

「え、あ・・・あーっ!吉田君」

 ビックリしてつい大声を出してしまった。

 目の前に立っているのは紛れもなく、最後に同じクラスだった、吉田君だ。体育祭などの応援合戦では主将を務めて皆を束ねていたりしたから、よく覚えている。明るくて数学に強い男の子だったっけ、私はそんなことを思い出しながらマジマジと彼を見た。

「わー、ビックリした、懐かしい!吉田君ここで何してるの!?」

 その格好は?そう思って早口で聞くと、彼はにかっと笑う。

「俺ここでたまにサッカーのコーチしてるんだよね。顧問に呼ばれて、休みの日にね、後輩の相手をしに」

「おお、サッカー部だったっけ?へえ~。それは凄いね」

「で、トイレの帰り、校門のところにずっと立ってる人がいるなあ、って思って見に来たんだよ。学校に用があるのかと思って。そしたら見覚えのある人だったから」

 私は納得して頷いた。たしかに、ちょっと不審者だったかも。


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