バウンス・ベイビー!
伊上さんがそう言ってケラケラと笑う。この子はそうだ、吉田君とあの頃から仲がよかったな、そう思い出しつつ私は口を尖らせる。
「どうせ落ち着きがなかったですよー。やっぱり年なのよ、もう25歳だし。四捨五入したら三十路だよ」
そう言うと皆がはあ、と重いため息をついた。・・・禁句だったらしい。
「死語だけどさ、やっぱり高校生ってキャピキャピしてるよね。なんか全身にエネルギー溢れてるって感じで」
もう一人の女子、澤田さんがそう言いながら煮物の小鉢をすすめてくれる。その隣に座ったのは前川君。実はすっかり忘れていた元クラスメートだけど、顔を見た時に思い出した。彼とは、こっそりと化学のノートを交換したことがあったはずだ。
「だよな。あまり疲れも感じなかったし。いつでも腹は減ってたし、ハードなクラブの後だけ、死にそうにはなったけど」
「前川君て何部だった?」
私が聞くと、彼は、ん?とこっちを向いた。
「あ、俺バスケ部」
「へえ~。知らなかった・・・」
私がそう呟くと、前川君はにやっと笑う。
「そりゃあ藤が俺に興味を持ってなかったからだろ。藤はいつでも平野を追いかけてたしなあ!」
ぶっ。私はついビールを噴出しかけた。咄嗟に横を向いたから被害者はなかったけれど、それは皆の好奇心を大いに満足させたらしい。一気に顔を輝かせてこっちを見ている。
「ねえねえそういえば藤さんて、あれから平野とどうなったの?もう高3の冬からあたしはほぼ学校にいってないからさあ!」