バウンス・ベイビー!


 推薦で大学進学した澤田さんがそう言いながら私を覗き込む。

「ずっと追いかけてたけど、結局告白とかしたの?」

「え、何これ。公開処刑かなんかなの?」

 私が呆気に取られてそういうと、皆がだって~!と囃す。

「凄かったからさ、あんなに行動出ることなんて出来ないって皆が思ってたし。藤さんは俺らの希望の星だ!って尊敬してたくらい。だけど仲が進展しないから、どうなってんだって同窓会では言ってたんだよ。藤は参加しないし、平野は一回来たけど何聞いても答えないしで」

 へえ、やっぱり平野は一回参加してたんだ!私は納得した。その時に、ヤツもこんな感じになったに違いない。だから今日来たがらなかったんだー・・・。

 納得しつつビールを飲んでいると、それで?と前川君の隣に座る畠中君が聞いた。

「平野とはどうなった?ってか、そういえば今はカレシいるの、藤?」

 どう答えたものか。私は真顔で停止する。だけどその態度から、彼氏がいるらしい、というのは全員に伝わってしまったようだった。

「あ、いるんだ彼氏。そりゃそうか!で、年上?やっぱり職場の人?多いんだよね、職場恋愛」

 澤田さんがそう言って喜ぶ。きっと彼女もそうなのだろう。だってこの興奮・・・職場恋愛をしているとしか思えない。そして多分年上の彼氏なのだろう。

 答えずにビールを飲んでいたけれど、皆の視線が痛い。

 私は一度ため息をついてから覚悟を決めた。もうさっさとカミングアウトしてしまって、他の話題にうつってもらおう、そう思って。


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