バウンス・ベイビー!


 こほん、と無駄に咳払いをしてから、私はテーブルの上の刺身を凝視しつつ一気に言った。

「実は、彼氏がその平野なの」

 うおおおおおお~っ!!って声が上がる。それは結構な音量で、居酒屋の店員さんの声もBGMも全部かき消すほど。勿論店内の視線が私達に集まってしまったから、私は真っ赤になってしーっ!と言いまくる。

「ちょっと皆叫びすぎだよ!」

 だけど興奮した奴らは聞いちゃいなかった。

「すげー!マジでマジで!?」

「ひょえええ~噂のカップルが本物になってる!」

「おおお~・・・これは、ちょっと感動ネタだな」

 皆が口々にそういう中で、ヒュウ、と口笛を吹いた吉田君が言った。

「じゃあまさしく今、平野と付き合ってるのか、藤さん?」

 私は恥かしさに消えたいと思いつつも、ビールジョッキを抱えたままで頷いた。

「うん、そういうことになって」

 ごにょごにょごにょ。これ以上はいくら突っ込まれても答えないぞ!そう決意した。

「それって大願成就だよな!おめでとう~」

 皆またジョッキをぶつけ合いながら、おめでとう~!て盛り上がっている。・・・大願成就。まあそうなるのかな。なにせ、ここにいる全員が私の高校時代を知っているのだから。

 だけど、冷やかしというよりは本物の喜びのようだった。だから私も照れながらも、皆にありがとうと言う。あの頃、きっと色々な人に心配をかけていたに違いない。私は必死だったから判らなかっただけで。


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