バウンス・ベイビー!
駅前まで皆で行って解散ってなった時、キップを買おうと券売機の方へ行きかけた私を止めて、吉田君が言った。
「藤さん、今日はごめんね」
「え?」
私は振り返る。
「吉田君何も悪いことしてないじゃない、どうしたの?」
いつもの明るい笑顔を消してしょげた顔をしている吉田君は、かりかりと頭を掻いた。
「いや、俺が余計なこと言った、と思って。あれから藤さん楽しんでなかっただろ。俺には関係ない過去のことなのに、申し訳ない」
あ、ううん、と私は手を振る。
「私こそごめんね、皆に気を使わせちゃったよね。飲み会、久しぶりの人達ばっかで楽しかったよ。誘ってくれてありがとう」
ついでに笑顔も見せる。それで吉田君はちょっと安心したようだったけれど、それでも更に言った。
「平野にも宜しく言って。それに・・・あいつ、あの頃色々大変だったんだ。だから恋愛どころじゃなかったのかも。・・・俺はこれ以上言えないけど、藤さんが不安になるようなこと口走って悪かった」
うん、がっつり気になるよね、それも!この野郎、吉田~!
そう思ったけれど、頷くだけにした。
「今は仲がいいんだろ?追いかけた恋がかなったって聞いて嬉しかったし、これからも仲良くね」
「・・・努力するよ。ありがとう」
あははと笑う。そして手を振ると、吉田君は行ってしまった。あとに残った私は一人、のろのろとキップを買う。