バウンス・ベイビー!


「・・・藤、さん、は」

 平野が口を開いた。瞬間、私は全身がぞわっとけば立つ。何、何なの何!?頼むから黙って―――――

「高校生の時、俺が好きだったんです。よくアプローチを受けて追いかけられてました」

 のおおおおおおおおおおお~おっ!!!

 私は顔面が炎上したかと思った。

「へえ。マジで?藤、それって本当?付き合ってたわけではないのか?」

 高峰リーダーが目を開いて私に聞く。私はもう完全なる阿鼻叫喚地獄にいたので、涙目で走り出した。

「過去の話です!!平野っ!余計なこというなああああ~!!」

 って叫びながら。

 ・・・畜生あの男。一生恨んでやる・・・。



 昼は食べられなかった。

 あまりのショックで喉を通らないだろうと想定して、そもそも何も買わなかったし、お店にも入らなかった。

 さっき暴露された、平野を追いかけていた過去が、私の頭の中でぐるぐると回っている。平野の声と共に。あのちょっと掠れた、昔は大好きだったあの声と共に。

 俺のことが好きだったんです・・・好きだった・・・アプローチをかけられて・・・。

「畜生!」

 口汚くそう罵って、私は無人の歩道橋の上で歯を食いしばる。

 下を眺めれば幾多の車が走り抜ける国道。・・・飛び降りたりはしない!だけど、今ならちょっとは世を儚んだ人達の気持ちが判るような気がする。


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