バウンス・ベイビー!


 その時がら、っと音がして顔を上げると、作業場のドアを開けて入ってくる浜口さんと平野がいた。二人はえらく話が弾んでいるようで、声をあげて笑っていたから驚いた。だってここではいつも無口で表情なしの平野が口をあけて笑っているのだ。リーダーや田内さんも驚いたらしい。二人そろって入口の彼らを見詰めている。

「あ、おはようございまーす」

 浜口さんが軽やかな声でそう挨拶し、平野が続いて、全体に向かっておはようございます、と会釈をする。私と一瞬目があったけれど、それはすっと外された。

 ・・・がーん!

 私は口元がひきつった。

「あ、うん、おはようさんです」

 リーダーがそう言って、私と田内さんも挨拶を口にした。二人は自分達を見詰める社員組を気にせずに話しながら奥へと入っていく。それでねえ、と浜口さんの明るい声が聞こえて、タイムカードを押すときにも笑い声が上がっていた。

「・・・えらく盛り上がってるな。ってかあいつ、あんなに笑うんだな」

 リーダーが呆気に取られた顔で奥を見ながらそういった。・・・うん、ほんと。何をあんなに盛り上がってるんだろう。

 私は不思議だったけれど、ちょっとホッとしてもいたし、傷付いてもいた。明るい顔で出勤してくれたから気まずい雰囲気はなかった。だけど、目は反らされましたー・・・。ああ。我知らずため息をつく。

 平野の顔を見たら嬉しくなるのか、それともムカつくのか。それが判らなかった。泣きたくなるのか、すがりつきたくなるのか。だけどやっと来たその瞬間は、私はただ体を固くして立っているだけだった。


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