バウンス・ベイビー!
2、パニックベイベー
・確かにヤツが好きだった・
思い起こせば9年前、15歳の春だった。
無事に入学式を終えた私は、ワクワクする気持ちが持続したままで通学路を歩いていた。
温かい春の朝で、お母さんについでにと頼まれたゴミ出しだって鼻歌まじりで済ませてしまうような。とにかく穏やかでご機嫌で、若さもあったから全身で弾むような状態だったのだ。
望んで受験した高校にいけることになったのだ。そこは学区内では一番遠かったから同じ中学から進学する生徒はたった4人だったけれど、つまり完全なる新世界へといくことになったのだけれど、それすらも嬉しかったのを覚えている。
高校デビューって言葉があったっけ?あんな感じではないが、気持ち的にはあれと同じだ。
ウキウキして毎日通っていた。
平野を初めて認識したのは、入学式ではなくて、教室に入ってからだった。規模の小さな高校で、男女別のやり方はあまりしないのが方針の学校らしく、平野と藤で出席番号は前後の関係。並ぶときにも最初の椅子に座るときにも、平野の姿が私の前にあったのだ。
高校1年の時は、まだ平野の背は低かった。
私はその頃と今ではほとんど身長は変わっていないから、やつが男子特有の遅咲きでぐんぐん伸びたのだ。男の子って、中学生まではすごく子供で、高校生になったら途端におじさんになる人もいるよね?あれほど極端ではないが、平野も私が追いかけまくった高校3年間で身長が伸びたのだろう。
最初は女子を含め、誰とも知り合いではなかったから、とりあえず前の席の男子に声をかけたのだった。「先生の話、長いよね」って。