バウンス・ベイビー!
・私はあなたと・
6年間の空白が、埋まったって思った。
あの時、あの高校3年生の春頃に、ずっと追いかけてくる私を自分も好きかもしれない、と自覚した平野は、最初は嬉しかったらしい。自分も女の子と恋愛関係に入るのかも、って多感な思春期の男子は考えて、喜んだらしい。
だからなんだな、て私は思った。進路を教えてくれたりしたのは。あの時の平野は喜んでいたのか、て。
だけど夏に教えられた母親の病気で、一気に現実は重くなった。
決心したそうだ。
絶対、この気持ちを私に悟られてはいけないって。そんなことになったら無駄に傷が増えるだけだから、って。夏休み前と後とで、彼の意識は変わっていた。
私が告白という行動を起こさなかったので、彼はよかった、と思っていたらしい。
これで、寂しくて残念でもいい思い出のままで学校を卒業できると。
なのに私が待ち伏せをして出てきたから、平野はショックを受けていたって。
なんで、今なんだ。そう思ったと、ぽつんと呟いていた。
「ハッキリと区切りをつけなきゃ、って思ったから」
平野はそう言った。
この女の子が凄く傷ついても、その方がいい、って。
日本に帰ってきて大学に入りなおし、呼ばれた同窓会へ期待を持っていったときには、私を探したと。どんな風に成長してるかな、自分がわかるかな、でもとにかく藤の今が幸せならいい、それが知りたい。そう思っていたけれど、私はおらず、私の情報もちっともなかった。私は高校の時の友達とは殆んど付き合いがなかったから、そりゃあそうだろう。