バウンス・ベイビー!


 平野がいなくなり、繁忙期が終わった作業場では毎日が淡々と過ぎていく。一時の、死ねってか!?と思う量の注文はなりをひそめ、許容範囲の仕込み量で終わることが出来る。

 だから相変わらずな高峰リーダーも田内さんもパートさん達3人も、元気で退屈そうに仕事をこなしていた。私は平野がいなくなったので挙動不審になることもなく、リーダーが私に手を伸ばすこともなく、以前よりちょっと仲良くなった田内さんとは雑談をして過ごしていた。

 そんなある日、3月に近づいた頃。

 昼食へと出かけようと作業場のドアを開けたら、そこに見知らぬ女性がいて驚いた。

 柔らかく降って来る初春の陽光の中、綺麗に光る茶色のロングヘアーをなびかせながら、小柄な女性が私を見て微笑む。色が白くて目が大きく、彼女からは優しい雰囲気がした。

「えーっと・・・?ご用ですか?」

 私は帽子の中に突っ込んでいた髪の毛を急いで解きながらその女性に尋ねる。すると想像通りの柔らかい声で、彼女が言った。

「すみません、高峰さん、いらっしゃいますか?」

 え、リーダー?

 私はついマジマジと女性を見てしまう。パッチリとした目に小さな鼻、色白の小顔。紛れもない、美人だ!!

「あ、はい。いらっしゃいます!ええと、お名前は・・・?」

 私が慌ててそういうと、女性はにっこりと笑った。

「岸田と言います」

 それはパッと周囲が明るくなるような笑顔で、私は思わず見惚れてしまう。だけどそんな場合じゃなかった!リーダーに、美人の面会希望だ!!


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