バウンス・ベイビー!
そしてその時、周囲にいた女の子たちに、ねえ~、聞いて!と話してしまったのだった。
『ちょっと智美!何するのよ~!!』
私は勿論真っ赤になって抗議したけれど、皆興奮した面持ちで話は盛り上がってしまった。幸は二宮君だし、あーちゃんは富田でしょ、皆の好きな人を知ってるんだから、ちーも公表しないと!あたしら応援するよ~!!そう言って、智美ははしゃぎまわる。
誰も被ってないから問題ないよね、って。皆でそれぞれの恋を応援しよう!そういって彼女は明るく笑う。
もうー!って言いながら、実は私も一種の快感を覚えていたのだった。
秘密を明かすことで、それが本当になったかのような感じ。
きゃあきゃあ真っ赤な顔で笑いながら、一層友達の絆が強くなったような感じ。
だけど、問題があった。
その時のはしゃいだ会話を、クラスメイトのお調子者、阪上俊夫がばっちり聞いていたのだった。今もフルネームで名前を覚えているにっくきあいつ。移動教室前で他には誰もいないと思っていた教室入口の影に、実はなんとやつはいたのだ。
どういうことになるか想像つくでしょ?だってお調子者なんだよ。それも私達だって盛り上がって笑い転げていたわけで。ヤツには罪悪感など欠片もなかったに違いない。
と、いうことで、翌日には私が平野啓二に片思いをしているということが見事に知れ渡っていたのだ。
私は呆然とした。4クラスしかない小さめの高校で、同級生のほとんどが私の秘密を知っていたからだ。ニヤニヤと悪そうな笑顔ではやし立てる男子、くすくすと笑い、平野はあっちに行ったよ~などと言う女子。