バウンス・ベイビー!
休憩まであと1時間半。まだまだ続く生肉との戦いに多少うんざりしながらも、私は倉庫の中で一人気合をいれた。
よし、頑張るぞー!
「えー、本当ですか、それ。うわー大丈夫ですか?病院行きました?」
そんな高峰リーダーの声が聞こえたのは、夕方近くなってからだった。
私もパートの二人も、何だと手を止めて電話で話すリーダーに注目する。病院とは穏やかじゃないぞ、一体何事だ?
見られていることは判っていたようで、だけどこちらをチラリとも見もせずに、高峰リーダーは私達にむかって手をヒラヒラと振り、壁に貼ってあるお手製のボードを指さした。高峰さんが作ったそれには「働け!!」と命令形の文字がカラフルに踊っている。
・・・へーい。
また串に肉を刺す作業に戻った私の後ろで、おばさん達もひそひそと話していた。誰からの電話かしらね、田内君じゃない?いや、でも浜口さんかもよ。明日出れないとか?って。
リーダーは白い帽子を被った頭に手をつけて、暫く黙って電話の向こうの話を聞いていた。そしてその内頷く。
「判りました。本社にはこっちから連絡しときますから、とにかく治してください。また連絡しますから」
はいはーい、と適当に言って、リーダーは電話を切った。当然、私やパートさん達はそれをじーっと見ている。
「何だよ、早く刺せよ~。まだ今日の分終わってないでしょ」
むすっとした顔で、リーダーはメガネをかけなおす。ふむ、機嫌は麗しくないようだわ、私はそう思って、仕方ないからズリの串刺しに注意を向けた。