バウンス・ベイビー!


 私は今回の噂のことで、私だけではなく、平野の立場まで居心地のわるい状態にしてしまったのだ。それがよく判っていた。彼も友達や通りすがりの女子達とに囃されて、イラだたしく思っているに違いない。

 自分だけでこっそりと想っていれば、彼はこんな騒動に巻き込まれずに済んだのだ。だけど言ってしまって、いまや学年全員が知っている。

 だったらもう、覚悟を決めよう!

 私は涙目で、そう決意した。

 平野が好きだって、思いっきり判りやすくしてやろうって思ったのだ。

 そうすれば、少なくとも智美は救われる。それに私が派手に平野を追いかければ、周囲だって囃すのをやめるだろう。いつものことだよってなるはず。それに望みをかけていた。あからさまに好意を示されれば、平野だって居心地の悪さは少なくなるかもしれない。気恥ずかしさもマシになるかもしれない。

 歯を食いしばった。

 ここは、頑張らなくちゃならない。

 友達の為にも、それから・・・私や平野の為にも。

 大丈夫か、と友人は皆心配した。だけど私は大丈夫!って大きな声で言う。大丈夫、きっとちゃんと出来る。そうやって守りたいのだ。自分や平野をも。

 それからは周囲が呆気に取られるくらいに、私は行動しまくった。直接平野に告白したわけではない。そんな正統派の勇気はなかった。だけど、平野があっちにいたよーと言われたら有難う!と叫んでそっちへと駆けていったし、人前でもガッツリ平野を観賞した。平野が好きなんだってね?と聞かれたら『そうだよ~』と答えたし、同じく平野を好きだと言ってきた女子とは情報交換もした。


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