バウンス・ベイビー!
リーダーが両手をパンと叩く。
「手渡しになります」
えー、珍しい!私は心の中でそう叫んだ。給料手渡しだって、一応大手といわれるこの会社でこの現代に!
皆何となく変な顔になった。多少遅れても貰えると判れば苦情はない。だけど、普段は口座振込みだから、自動引き落としなどの分のお金をわざわざ入金しなきゃならない面倒くささはある。
前園さんが口を尖らせて言った。
「手渡しだったら私、貰ってすぐに使っちゃうかも~。ちょっとリーダー、遅れてもいいから振込みにしてもらってよ」
「残念ですけど決定ですよ。こっちだけではく、本社事務や山田チームも全員そうですから文句言わない。そういうわけなので、支給の時には必要ですから明日は判子も持ってきてください」
本社の事務や、ここと同じことをしている別の作業場も同じなのであれば仕方がない。パートさんはまだしばらくブツブツ言っていたけれど、仕方なく皆作業に戻った。
だけどさ、私は一人で首を捻りながら考える。変わってしまうなら、もうちょっと早くいえるはずだよね?なんなのよ一日前の連絡って。
ギリギリの通告は気に入らなかったけれど、とにかく貰えるのであれば口に出しての苦情は控えるべきだよね。私はそう思ってちらりと高峰リーダーを見る。
彼は今日もいつもの仏頂面だった。折角元は綺麗なお顔しているんだから、もうちょっと笑えばいいのにさー。
手は動かしながら、私はそんなことを考える。