バウンス・ベイビー!
ダメよ、しっかりして私!今はズリに集中しよう。集中。袋から出してまずは二つに切って、包丁を斜めにして薄く切って・・・。
何とか6前の自分を追い払って、目が痛くなるほどに手元のズリをガン見する。
思い出す必要なんてない。心の中に穴を深く深くふかーく掘って、その中に埋めてしまおう。それからついでに、高笑いする私の銅像をのせたコンクリートの重しなんかも上に載せてしまえ。そして周囲を緑で覆い隠す。忘れるのよ、私。
もし詳細に思い出してしまったら―――――――――――また、盛大に傷付くはずだ。
「おーい、追加だってさ。田内と藤、肝を2バットと葱間を3バット追加だぞー!」
ファックスを手に高峰リーダーが嫌そうに叫ぶ。ええっ!?と珍しく田内さんが声をあげる。
「仕方ねーだろ。宴会が入ったんだとよ~、ほら、駅前の2号店からだ。俺だってつくね作るんだから、お前ら文句言わずにやれよ」
・・・宴会。くそ。
田内さんが私を見た。
「じゃ、僕葱間するから、そっちは肝宜しく」
「・・・はい」
私はため息をついて、肉を切りつけた。
永遠に終わらないかと思った。