バウンス・ベイビー!


「リーダー、誰からの電話だったの?浜口さんから?」

 好奇心を押さえられないおばさんがそう聞いて、リーダーは更にしかめっ面になった。それから大きく息を吸い込んでため息を吐き出すと、言った。

「そうです。浜口さん、ぎっくり腰になったらしいんですよ。だからちょっと仕事これないって。とにかくお二人は今日の分頼みますよ、焼き鳥のない焼き鳥屋なんて、売るもんないんですから」

 口でははーいと返事をしていたけれど、おばさん達はそれからマシンガンのように喋りだした。もう一人のパート仲間を突然襲ったその不幸に関して。若干嬉しそうに。

 私は口の中で、あら~、と呟く。

 これから冬にむけて、焼き鳥屋は繁忙期に入るのだ。立ちっ放しで仕込みをするこの仕事では、腰を痛めることはよくあるけれど、ぎっくり腰はキツイよね、そう思ったのだった。

 浜口さん・・・可哀想に。私は個人的にも一番親しいパートさんの悲劇を思ってため息をつく。だけどぎっくり腰ってそうそう簡単には治らないんじゃなかったっけ?私はちらっと上司を盗み見る。

 だから高峰リーダーは仏頂面なんだな。口をぐっと引き結んで仕込みに戻ったリーダーは、今、頭の中で忙しく考えているはずだ。

 皆の休みを確保した上で、滞りなく業務を遂行し、繁忙期に備えるにはどうしたらいいか、を。

 あ~ら、大変だ!




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