バウンス・ベイビー!
浜口さんは目を輝かせて、是非読みたいわ!と言ってくれたのだ。その時書いていたのは恋愛ものではなかったけれど、私は非常に恥かしかった。だけど結局は自分のペンネームを教えた。
というわけで、浜口さんは私の趣味を始めるきっかけになった人なのだ。そして今でも、彼女は私の書く話を読んでくれている。だけどそれは、二人だけの内緒の話。
浜口さんは、あ、と顔を改めた。
「千明ちゃにも迷惑かけて、すみませんでした」
私はビックリして急いで両手を振る。
「いえいえいえ!私は迷惑なんて受けてませんよ!リーダーがすぐに新人さんいれてくださったし」
「あ、平野君ね。今日初めて会ったけど、黙々と働いてるわねあの人」
その新人は、会いたくない男だったわけだけど。きっとそれも、浜口さんは聞いているはずだ。浜口さんが声を潜めたところで、北浦さんが前から口を突っ込む。
「平野君は覚えるのも早かったわよね、千明ちゃん?去年の学生さんとはえらく違うわよ~」
で、その話題の平野はどこへいったのだ?私は一瞬そう聞きそうになって、急いで打ち消した。ダメダメ、やつのことは気にしない!私には関係ない。今日は休日なのだから!
「おーい藤~!いつになったら来るんだ!」
「あ、リーダーが怒ってるから行きますね。お疲れさまです」
「はい、また明日ね~」
「お疲れさま~」
二人は井戸端会議に戻る。私は作業台をすり抜けて、リーダーが待つ事務所へと入った。
「この明細と袋の中の金額確認して。合ってたらここに判子」