バウンス・ベイビー!
リーダーが明細のうつしと封筒をぽんと置く。私ははーいと返事しながら言われた通りに確かめた。
「あってます。判子、ここですね」
屈み込んで書類に判子を押していると、私のうしろに向かってリーダーが、おう、と声をかけた。
「平野、あったか、串は?」
「ありました」
私は屈み混んだままで固まった。・・・平野、今、後ろにいるんだな。よし絶対に振り向かないぞ。
どうやら串がなくなって、平野は倉庫に新しい串を取りに言っていたらしかった。もっとぐずぐずしてこればいいのに、もう。私は心の中でブーイングをかましながら封筒を鞄に仕舞う。
「次はせせり頼む。俺の補助で入ってくれ」
「はい」
「それと神経質に30グラムにあわせる必要ないぞ。29~31なら合格だから」
「判りました」
話しあっている二人の邪魔をしないように、そして平野を見ないように、私は慎重に気をつけてその場を後ずさり、事務所の外へと出る。
藤?とリーダーが顔を上げたときには、私はお疲れ様です!と叫んでその場を離れた。
よっしよしよおおお~し!平野のことは完璧に無視したぞ!私は鼻息荒く自分を褒め称える。過去のことを思い出して苦しくなるのはもうご免だし、間違っても再び好きになどなりたくない。なんせ元々私好みの男なのだから、近づかないのが一番なのだ!
とにかく、今日は成功したわ。私はそうほくそ笑んだ。明日は平野が休みのはず。ということは、今日と明日とはヤツとヤツが絡む過去の思い出に振り回されなくてもいいってことなのだ。