バウンス・ベイビー!
私の叫び声が煩かったらしい。うるせえよ!と怒鳴ったあとで、リーダーが言う。
『ただの明細、じゃねーんだよ。恐ろしい個人情報のかたまり。あれを放置して誰かに見られたり盗まれたりしたら、首が飛ぶのは俺のだからな』
大体悪いのは持って帰らなかったお前だろー!と説教まで聞こえてきた。
くらくらくら・・・。折角あたたまった体も一気に冷えてかたまったようだった。
そんな・・・出来るだけ避けている男が、わざわざ会いにくるなんて・・・。泣きたい。そう思いながら途方に暮れていたら、少し間をあけて、リーダーが言った。
『まあでも、もう結構経つんだよ。お前が電話に出ないから、部屋にいなけりゃドアの新聞受けに放り込んでこいって言ってあるから、そうしてるかもしれないぞ。折角もっていった奴には可哀想だけど、そんなに嫌なら、もしまだ来てなくても居留守つかっとけよ』
「居留守・・・いいんですか、使っても」
そう聞くと、電話の向こうで深いため息が聞こえた。
『だって仕方ないだろ。なんでそこまで嫌がるのが判らないけど、嫌ならな。俺はちゃんと仕事してくれたらそれでいいから』
じゃあな、そう言ってリーダーは電話を切る。私はお疲れ様です、と呟いて、呆然と暗い空を見上げた。
・・・平野、どうか、もう帰ってくれてますように。
忘れて帰ったのは自分だ。だからリーダーを責めるのは間違いだし、本社ついでに寄り道を命じられた平野こそ被害者であると思わなければいけない。私はそう何度も自分に言い聞かせて部屋へと戻る。
ゆっくりそろそろと階段を三階まで上がって、静かに踊り場から自分の部屋の方を覗き込んだ。