バウンス・ベイビー!
出て行け。今すぐに。ほんと、私をどうか放っておいて。
平野は少しの間そのままで立って私を見ていたようだったけれど、その内に玄関の方へ向かって歩く気配がした。
「じゃあな、またあっちで」
そんな声が聞こえて、ドアがしまる。
私はノロノロと顔をあげて灰色のドアを見詰める。
・・・またあっちで?ああ、作業場でってことね・・・嫌かも。嫌だわ。嫌だ、平野に会うのは!!
「い~や~だあああ~・・・」
頭の中は混乱してぐちゃぐちゃだった。よく弾むボールが色々壁や天井にあたって思いも寄らない方向へ飛んでいくでしょ?心象風景としては、まさしくそんな感じだった。
・・・あいつが私の職場にきてから、ジェットコースターに乗ってるみたいだ。それも、目隠しして。
『壁ドンされる気分とか、わかっただろ?』
確かに、たしかーに判った。経験させて頂いた。あの圧迫感、それから一種の恐怖感。
私はぐったりと床に崩れ落ちた。
―――――――壁ドンって、案外ムカつくものなのね。