バウンス・ベイビー!
「バイトさん募集したらどうですか?」
自分が金を払うわけでもなく、忙殺から救ってくれる人が欲しい私は簡単にそういう。高峰リーダーはその切れ長の瞳をメガネの奥でむいてみせて、鼻に皺を寄せた。
「人件費は高いんだよっ!それに前みたいなエリートの馬鹿野郎が来たら大変だし」
去年、同じ時期に雇った期間契約のバイトさんは、有名国立大学の学生だった。きっと適応能力も高くハキハキと仕事をしてくれるに違いない!という全員の勝手な期待を一瞬で裏切ったその男子学生は、屁理屈ばかり並べる一般常識が欠如した人間だったのだ。
頭はいいのかもしれないが、間違いなくコミュニケーション能力はゼロ。
何を指図しても「それをする理由は?」などと聞いてきて、元々短気な高峰リーダーを大爆発させたのだ。仕事だからだよバカ野郎!と罵って、多分生まれて初めてバカと言われた彼を泣かしてしまったのだった。
バイトさんが仕事内容を覚えるまでにこちらが疲れてしまった経験は、あれが初めて。
リーダーはそれを思い出して身震いしたようだった。
「あんなの稀ですよ、リーダー。新人さんが来たところでどうせ即戦力にはならないでしょうから、今からいれて教えるのがいいですよ、やっぱり」
私が手をヒラヒラさせて暢気にそういうのを、高峰さんは苦々しい顔で見上げる。そして、一瞬真顔で考えてから頷いた。
「よし、入れよう」
「バイトさんですか?」
「そう。そんで、藤が研修担当な」
「え」