バウンス・ベイビー!


 邪魔な前髪を手で払って、リーダーはにっこりと笑った。私はその笑顔を見て一瞬固まってしまう。普段不機嫌な顔をしていることの多い高峰リーダーは、笑えばかなりのいい笑顔をする。珍しさも手伝って、その笑顔の価値は上がるばかりで―――――――――

 その珍しい微笑み顔で、リーダーはさらりと言った。

「今から入れて教えるのがいいっていったのは、藤だからな。お前、責任もって教育しろよ。人件費がかかるのは本社に謝っといてやるから」

「ええーっ!?」

「ハイだろ、ハイ。俺は上司だぞ、全く」

 折角の綺麗な笑顔をすぐに消し去って、リーダーはブツブツと苦情を零した。そのあと、もう帰ってよし、と私に言うと、机に向き直ってしまう。

「え、え、高峰リーダー、本気ですか?」

 私が教育担当とか、絶対嘘でしょ。そう願いたい!強烈なお祈りつきでそう聞いてみたけど、リーダーは、ああ、と返答する。

「本気本気。そろそろお前も新人教育して力をつけな」

「だって私まだ2年ですよ!」

「もう2年いんだろ。成果みせろ」

 ・・・・・くそ、やってしまったかも。

 悔しい思いで私は頭を下げ、お疲れ様でした、と言う。それからお先に失礼しますともう誰もいない作業場で叫んで、会社を後にした。

 要らない一言だったんだ、あれって。そう思ってうんざりする。簡単に、雇ったらどうですかーなんて言うべきではなかったのだ。


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