バウンス・ベイビー!
どうか、忘年会の日が平野の今年最大の多忙日でありますように。そして都合が悪いからって断ってくれますように。そうすれば、私は平常心で飲めて、きっとすごく楽しめるだろうから――――――――。
だけど、やはりそんな希望通りには進まなかった。
あとは春に卒業するだけという大学生は、基本的に暇なのだ。私だって大学最後の冬休みはバイトに精を出していた記憶があるし、その分お金もあったので飲み会だってよく行っていた。
それに何時の間にやら高峰リーダーが仕込んだ話によると、平野は現在彼女もいないらしいく、休みの日は家でダラダラしているだけらしい。そう聞けば私の休みとほぼ同じだが、私は文章を書くという立派な(?)趣味があるのでヤツの生活よりは潤っているはずだ。
だから充実度でいえば、私はちゃあんと平野に勝っているのだ!まあ・・・ヤツがそれを気にするとは思えないけれど。
とにかく、非常に残念なことに暇が多いらしい平野は、翌日出勤してきた時にリーダーが予定を聞いた時、あっさりと頷いた。
「判りました。15日ですね」
・・・来るんかいっ!私はヤツに背中をむけて心の中で毒付いた。
うまいことシフトがずれていて、平野に会うのは4日ぶりだ。あの日給料明細を持ってきてくれた夜から、平野とはまともに喋っていなかった。もうあまり仕込みのことでも注意する仕事もないし、私としてはそれを喜んでいたのに。
えー、飲み会、来るのー?そこは遠慮して休めよ、もう!どうせあんた来年の2月には辞めるんでしょ、ここを!
やっぱり未だに緊張してしまう体を宥めながら、私は肝を切り分けていく。ちぇっ・・・じゃあいいよ、忘年会ではパートさん達と楽しくお喋りしようっと。出来るだけヤツから遠ざかること、それを第一にしなければ。