バウンス・ベイビー!
だって何故かキスをされてしまった過去に封印したはずの男が、今日もここにくるんだよ!どうしたらいいのよ私!
まだ平野もパートさんも来ていない。だけどその時、田内さんがタイムカードを押して、おはようと言いながら入ってきた。
「おはようございます~。早いですね、田内さん」
「あれ、どうしたの?」
田内さんがぱちくりと目を開けて私を見た。
「何か、えらくしんどそうじゃない?今日はハッピーデーなのに」
あははは、ハッピーデーだって。田内さんが上司ナシの仕込み量が少ない日をそう呼んでいると知って面白かった。少し笑って、気持ちも軽くなる。
「睡眠不足でして。でも今日の量なら大丈夫だと思います」
「少ないの、嬉しいよな~。月に2回しかないもんね、こんな日。朝から気楽で早めに来てしまった」
田内さんはエプロンと帽子をつけて、作業場へと行きかける。と、そこで足を止めて振り返った。
「・・・何なら、作業台、換わろうか?今日だけでも」
「え?」
私は顔を上げる。田内さんはちょっと言いにくそうにして、だけど決心したように口を開いた。
「平野君の隣が嫌なら、今日は場所を換われるよ。その・・・藤さんの睡眠不足なのもあの人が原因なら、と思って」
ガーン。
私はショックを受けた。