バウンス・ベイビー!
え。その形に田内さんの口が動いた。内心なかり葛藤したらしい。だけど彼も歪めた表情のままでちらりと壁の時計をチェックして、それから微かに頷いた。
私は誰かがきたらすぐに判るように作業場へ繋がるドアをしめて、ドアへ顔を向けて椅子に座る。それから小声で話し出した。
「高校1年で同じクラスになって、好きになったんです。私が、平野のことを。一度も告白はしなかったけれど、周囲にもバレバレの状態ですっと追いかけしてました。そんな3年間だったんです。平野は私を避けなかったし、迷惑そうでもなかった。それに他の女の子と付き合ったりもしなかった。だから、私には変な自信がわいていました」
田内さんも椅子に座る。それから頷いた。本音は迷惑なのかもしれないけれど、とにかく先を促してくれてるんだって思って、私は早口の小声で続ける。
「付き合ってって言えば、頷いてくれるかもって。少なくとも嫌われてはいないはず。ずっとそう思っていたし、3年生の最後の方は進路の話なんかも、聞いたら教えてくれたんです。同じ大学にいけるかもなって言われて有頂天になって。勉強もすごく頑張ったりして」
平野は私よりも偏差値が高かった。センター入試が始まるまで、私は志望校を平野と同じにして懸命に勉強に励んでいたのだ。
一日中、起きている間は勉強していた。自分が行きたい場所は平野が行きたい場所だ、そう思い込んで、猛勉強していたあの頃。それでも時間は過ぎていく。同じ高校で会えるのも、もう少しだけなのだ、と12月の終わり、年末のテレビ特番を見ている時にハッとしたのだ。