バウンス・ベイビー!
ヤツは今では普通に挨拶をしてくるし、仕事中はやはりあまり話はしないけれど、休憩時間などはいきなり私に話しかけてくることもある。私はそれを恐れて、出来るだけパートさん達と行動を共にしたり、迷惑がる田内さんに話し掛け捲ったりして過ごしていた。
たまーにリーダーからの視線を感じるけれど、ここの監督者である高峰リーダーは特に注意や意見はしないという方針らしいとわかった。私が平野を避けまくっていることは、きっとバレているだろうって思うけれど。
で、とにかく今日は平野が休みだった。
そして明日は私が休みの日。
明日の夜はこの作業場初の忘年会があるけれど、それは勿論ほかの人もいるわけで、タダの飲み会なのだから気は楽だった。
もうすぐ就業時間ってこの時、私の機嫌がいいのは当然のことなのだ。
「おーい、藤。明日お前休みだけど、忘年会忘れんなよ~」
リーダーがニヤニヤしながらそう言ってくるのに、私は包丁を持ったままで振り返ってふんと鼻息で返事をした。
「忘れませんよ!タダで晩ご飯が食べられるのに!」
「・・・お前ね。その言い方は露骨だろ。一応日々の労働をお互いに称えあう目的なんだけど」
「判ってますよリーダー!でも晩ご飯代が浮くのは有難いですから!」
「まあな。お前も一人暮らし組だったよな」
また浜口さんが明るく笑った。その隣で前園さんが、いいわね~、って口を尖らせる。
「あたしらなんか、家族のご飯作ってこなきゃならないのよ~」