本を片手にあなたと恋を
「ちょっと、強引というか豪快だけどいい人だよ。」
割り当てられたプリントを受け取り、あらためて座ったとき、美桜が声を潜めて言った。
拓海は、プリントをクラスごとにまとめながら不満げに呟いた。
「いい人なんだろうな、とは思うよ。でも説明足りなさすぎだろ。係りで別れろって言われたときにはどうしようかと思った。」
「確かに焦ってたね。思わず声かけちゃったもん。」
「いや、声かけてくれてよかった。助かった。」
「それはよかった。他にも分からないことがあったら聞いてね、できる限りお答えします。」
そう微笑む美桜に、おどけて言ってみた。
「分からないことが有りすぎて、何から聞けばいいのか分からないときはどうすればいいんですか、先生。」
実際、知らないことが多すぎるのは確かだ。
「そうですねー、困難は分割せよといいますし、1つずつ片付けましょうか。」
意外にノリのいい美桜に真面目な顔をして答える。
「放課後の当番はどうしたらいいのか、学年代表は何をするものなのか、選書会は具体的にいつ何をすればいいのか、そもそも、今渡された督促状って何をするのか、ってところです。」
「あ、本当に多い…。」
えーっと、最初はなんだっけ?
あ、そうだ放課後は…
と必死な美桜の説明を、拓海は頬杖をついて聞いていた。