本を片手にあなたと恋を
「それで、鈴木とどうして知り合いなの?」
カウンターに人がいなくなった瞬間、真央は美桜に尋ねた。
昨日の図書委員会が終わったあとは真央がすぐ部活に行かなくてはならず聞き損ねたのだ。
昼休みの当番では、カウンターの仕事昼休みが始まってすぐと、終わる直前以外は結構暇だったりする。
ボックスの本の返却作業をしつつ真央とおしゃべりするのが習慣になっている。
美桜は、説明に困りながらゆっくりと答える。
「えっと、まずそもそも知り合いって訳じゃなくて私が名前知ってただけで向こうは知らなかったと思うし。」
そこまで言ったとき、ニヤニヤと笑う真央に誤解を感じる。
「ふーん。接点もないのに美桜は鈴木の名前と顔を知ってたんだぁ。」
「なに考えてるのー? そんな面白い事情じゃないよ。」
「恥ずかしがる必要はないんだよ、美桜!鈴木、中学でもそれなりにモテてたし。惚れちゃっても仕方ないよ。」
今まで見たことのないほどの満面の笑みで、そう言った真央に慌てる美桜。
「ち、違ーう!そもそも、名前知ったのの方が先だし。一目惚れとかしたことないし。」
美桜の必死の否定に、真央はころっとニヤニヤ笑いを納めて美桜に言った。
「なんだ、そうなの。つまんないなぁ。
で、何で名前を知ることになったわけ?」
そう聞かれて釈然としないけれど、美桜は拓海と会うまでの経緯を説明したのだった。