本を片手にあなたと恋を
「なんだよ、マナーって。全部疑問系だし。」
佐々木、面白すぎ。
そう笑われて、しかもツボだったようでいまだにかたを震わせている。
何だかな、とは思いつつも嫌な感じはしなかった。
「やばい、涙出てきた。そして、郵便局まで来たようですが?」
ようやく笑いが収まってきた様子の拓海に言われて初めてその事に気づく。
「あ、本当だ。私、真っ直ぐだけど鈴木くんは?」
「右。送ってくよ。」
「やっぱり、真央と同じ方向かぁ。あ、あとは大丈夫だよ、5分と掛からないし。」
美桜が笑顔で言った。外はまだ暗くはない。
「そっか、じゃあ金曜日からよろしく。佐々木美桜さん。」
「じゃあね、鈴木拓海さん。こちらこそ、よろしく。」
わざとらしく名前を言って手をあげた拓海に美桜もわざとらしく呼び返して手を振った。
こぼれる笑みを押さえきれずにちょっとにやにやしながら、家に向かって歩くのだった。