本を片手にあなたと恋を
美桜は、とても急いでいた。
思いがけず、HRが延び当番の時間が迫っていた。
今日は、金曜日。
初めて、拓海と当番をする日。
待たせちゃってるかな
鍵をとって階段をかけ降りて図書室に向かうと、図書室のドアは少し空いていた。
不思議に思いつつも、ドアを開くと中に入ると、カウンターで拓海が本を読んでいた。
なんて、声をかけようか迷いながら鍵を壁に掛けてカウンターに入る。
鍵がカチャリと音をたてて、拓海が顔をあげる。
「お待たせいたしました。」
と言いつつ鞄を置く。
拓海は、「いや。」と言って本を閉じた。
「鍵、空いてたんだね。」
「さっきまで、先生が居たから。」
なるほど、廊下で待たせずにすんでよかった。
「とりあえず、コンピュータ立ち上げたけど、何したらいい?」
「まずは、返却作業。」
カウンターの横の返却ボックスを指差して見せる。
「それで、人が来たら貸し出しするぐらいだよ。あと、私は帰る前に、ちょっと整理してるかな。」
「了解。俺は、作業終わった本を棚に戻せばいい?」
と訊きつつ、持っていた本を鞄の上に落とすと、立ち上がる。