本を片手にあなたと恋を

また、バーコードを読み取りながら「あ、」と声をあげる。



急がないとすることないよね。



今さら、その事に気づいた美桜は少し慌てる。


拓海は、「焦らないでいいから。」とふわりと笑う。



そんなに、自分は分かりやすいのだろうか


美桜がそんなことを考えていたとき、一人の生徒が来て、真っ直ぐにカウンター歩いてくる。



「こんにちは、返却ですか?」


生徒が手に持つ本を見て尋ねる。


その生徒は、頷くと本を差し出した。美桜は、本を受けとると「ありがとうございます。」と笑顔で言った。



もう、だいぶ慣れてきた。


最初は、なんとなく恥ずかしくてはっきりと声を出せなくて困った。


今は、近くの図書館の図書館員さんの笑顔を思い出しながら受け答えするようにしている。


小さい頃から、通ってきた図書館で名前も覚えてる人もいる。



向こうも、名前を覚えてくれていて「美桜ちゃん」と声をかけてくれるほどだ。



図書館の持つ雰囲気は、そんな図書館員さんたちが作っているのだと美桜は思う。


カウンターでの挨拶や、壁飾り、本の紹介


一つ一つの、それらに込められた思いがあの図書館を作っているのだろうなと。


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