本を片手にあなたと恋を
さっきの生徒と入れ違いに、また別の生徒がやってくる。
今度の生徒は棚の間をうろうろしている。
放課後の図書室に人が来るのは、ほとんどが鍵を開けて少ししてからの10分ほどだ。
「それ、持ってく。」
拓海がコンピュータ越しに手を伸ばし、初めてずっと立ちっぱなしだった拓海に気づき、
「お願いします。」
返却作業が終わっていた数冊を手渡す。
「ん。」
忘れてた、今日は一人じゃないんだ。
んー、どうもいつもの感覚でぼーっとしちゃうな。
一人の当番の時はいつも、今みたいに作業しつつどうでもいいことをぼーっと考えていた。