本を片手にあなたと恋を



さっきの生徒がいつのまにかに近づいていて、慌てて


「こんにちは、貸し出しですか?」


と笑顔を作った。その生徒は、答える代わりに本とカードを差し出す。


受けとると、またバーコードを読み取り画面を確認して手渡す。


「6/26までです。」


本を受け取った生徒は分かってると言うように頷いて歩いていった。


「今の、クラスのやつだ。図書室来てるの初めて見た。」



戻ってきていた拓海が驚いたように言った。


「あの人、常連さんだよ。」


「へー、意外。」

さらに驚いた様子の拓海が続ける。


「というか、佐々木よく覚えてるな。」


その言葉に少しドキリとする。



「俺、全然わかんないよ。誰がよく来てるとか。」


「良くないとは思うんだけど。ついつい、観察しちゃうんだよね。この人、この本読むんだとか。」



「あぁ。でも、ちょっと分かる。」



そう言うと、また積み上がっていた本を持っていく。



何気なくだけど肯定してくれたのがちょっと意外。


人の読む本とか、いつ図書室に来るとか、見られてると思ったら嫌だろうなとは思いつつ、ついつい、人間観察してしまうのだ。


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