本を片手にあなたと恋を
「この本、読む?」
その言葉は唐突だった。
金曜日の放課後、美桜と拓海は図書室でいつものように当番をしている。
人が居なくなったとき、作業を進めつつ読書トークや日常のくだらないことを話すこが当たり前になってきている。
今日も、人が居なくなり本を片付け終えて並んで座った。
拓海が何か考えている様子だったので、美桜は黙って言葉を待っていた。
すると、拓海は鞄から一冊の本を取り出した 。
「この本、読む?」
「え、なんて本?」
と言って拓海が差し出す本を受けとる。
「わー、これって!」
見上げると、拓海は頷く。
「そう、別冊。」
前に、拓海が読んでいた「ひとかけらの魔法」は全4作のシリーズだった。
あのあと、拓海はもう読み終わってたようなのでそのまま美桜も借りて読んだのだ。
その後、一気に全シリーズを一週間で読んでしまった。
その事を、拓海に話すとあのシリーズは別冊もあると教えてくれた。
残念なことに、高校の図書室にはなかったので読むことはできなかったけれど。
でも、その別冊が今、手の中に!
「先週、言わなかったけど、家にあったから。よければ貸す。」
「借りたいです!」
拓海は若干、食い気味な美桜におののく。
「どうぞ。」
「ありがとー!!」
美桜がはしゃいだ声をあげる。