本を片手にあなたと恋を
次の週の当番の日、美桜はカウンターで貸し出しの作業をしていた。
美桜の高校では、返す本はボックスに好きなときに入れる仕組みだ。
溜まった本は図書委員が暇なときにまとめて作業をしてしまう。
一方、貸し出しはカウンターで直接本を受け取り手続きを行う。
いつものように、機械的に本を受け取りカードを受け取って手続きを終わらせていく。
あ、この本ずっと読みたかった本だ。
そう思ったとき、カードに記された名前をみて思わず、声をあげそうになった。
鈴木 拓海
顔を上げて目の前の顔を盗み見る。
やはり、見覚えはない。
背が高く、大人びた雰囲気。
目が合わないように、さっと視線をはずすと手続きを済ませて本を渡した。
その後も、一度認識したからか図書室でよく見かけるようになった。
当番の日以外でも本を借りに来ると大抵この“彼”は来ている。
そして、気づいたことが1つ。
“彼”と本の好みが似ている気がする。
彼はいつも美桜の好きな感じの本を持っているのだ。
ミステリー、ファンタジー、恋愛、外国人作家の本に純文学。
彼は様々な分野の本を読んでいるようだ
美桜と同じように。