本を片手にあなたと恋を
「佐々木って、思ったことは何でも言うのな。」
独り言のように拓海が言った。
「え、そう?私なんか失礼なこと言った?」
「いや、そういう訳じゃないけど。最初のイメージと違っただけ。」
「最初はどう思ってたの、私のこと。」
「静かそうだし、言いたいこと言えないタイプなのかと。」
「あー、確かに割りと人見知りかも。でも、結構私、おしゃべりだよ? 」
と微笑む。もう、わかってるだろうけど。
「おしゃべりか…。俺も佐々木といるとおしゃべりになる気がする。」
「普段は違うの?」
「今まで、こんなに本のこと語ったことなかったから。」
ためらいがちに付け足す。
「それに、佐々木といるとなんか落ち着く。」
しっかりと目があって、真っ直ぐな瞳に気恥ずかしさが募る。
「そ、そうなの? それは、光栄です?」
顔が火照るのを感じる。
嬉しいような、でも少し複雑で、この感情は何と言ったらいいのだろうか。
誉められたわけでもないのに。
「光栄なのか…?」
「もう、そこは突っ込まないで~。ほら、作業しましょう作業。今日は、脱線しすぎたなー。」
わざとらしくいってみると、拓海はなにも言わずに、ただちょっと笑って作業を再開したのだった。